ただ、風のために。4 (2001/August)

遠い記憶
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2001/8/2 (木)

■ ハッカーとSFファン・普及させる、ということ

_ 昔から(とりわけアメリカでは)ハッカーとSFファンの相似性を 述べる人がいたそうですし、実際、 「ハッカーになろう」(これはエリック・S・レイモンドが書いている こともあって、RubyじゃなくてPythonを勧めているところが個人的には ちょっと(^^;)の中でも、 「ハッカーになるためにはSF大会に行け」、みたいなことが書かれていますが、 ここで書きたいのはそういう話ではありません。

_ 私の独断と偏見によれば、日本のSFファンの中でも瀬名さんの 提案とかに冷淡な人々のスタンスは、日本のハッカー、 とりわけ*BSD系でハックしている人々の一部のそれと重なるところが大きいように 見えたりします。あ、私のふつうの語彙では「ハッカー」には通常やや敬意が 込められていたりするのですが、ここでは単に「がんがんハックしてるひと」 みたいな意味で使っています。

_ 瀬名さんのやっていることは、フリーソフトに関連したどこかのMLの ような場所で、

「ハッカーたちは、本当はもっと実り豊かな仕事ができるはずだし、 もっとすごいフリーソフトも多数のハッカーの手があれば生み出すことが できるはずだ。
そのためにはハッカーが余暇でハックしているようじゃだめだ。 ハックで生計が立てられるように、多くの人がフルタイムでハックできるような 環境の整備が重要だ。 そんな環境を実現するためには、人々がフリーソフト・オープンソースを 使うよう、啓蒙活動が重要だ。
だからこそ、フリーソフトウェアに関わっている君たちユーザーのみんなも、 啓蒙活動やフリーソフトの積極的な利用につとめるべきだ。」
……といったようなことを 語りかけているような気がするのです。

_ もちろん、これはある意味正論ですし、そう提案すること自体には 悪いことなど何もありません。実際、そのような啓蒙活動に勤しむ人は、 フリーソフトウェア・オープンソースな人々の中に少なからず います。例えばJUSなんてのは そのための組織みたいなもんでしょう(なお、JUSはフリーではない UNIXも応援しています。あしからず)。

_ が、それはあくまで「啓蒙したい」という人が自主的に啓蒙するとか、 「支えたい」という人が勝手に支える、というだけであって、 それを多くのユーザに期待したり、ましてや協力してくれないユーザが 多いことを嘆くのは、何か違うように思えます。

_ おそらく、*BSD寄りのハッカー、「フリーであり続ける事を保証する ライセンス」であるGPLではなく、「フリーであり続ける事からも 自由なライセンス」であるBSDスタイルのライセンスを選んで使う人なら、 こういうふうに言うんじゃないでしょうか。

_ 「自分はハックするのが好きだし、自分のコードが広く使われる ことは悪いことじゃない。だからといって、自分や他人が書いた フリーソフトを積極的に広めたいかと言われても、さして興味はないし、 フリーソフト自体の啓蒙にも興味はない。使いたい人が自由に使える のであれば、その成果物が広く使われようがごく一部のみに使われ ようが関係ない。また、自分のコードを利用して作った成果物が フリーであろうがなかろうがどうでもいい。 とにかく、使いたいひとは自己責任で勝手に使う。使いたくないひとは 金を払って有償のソフトを買う。それで十分。 もし、それでそのソフトが広まらないにしても、それは そのソフトがそれだけの魅力しかなかった、というだけで、 無理に広めようとしたところでおかしな形になるだけだろう。」

_ こういうスタンスの人に対し、啓蒙活動に協力させようとするのは ちょっと無理っぽいですよね。

_ この辺の温度差は、ジャンルに対する想い入れとは別のものです。 ジャンルを心から愛していたとしても、それが積極的な啓蒙に 結びつかない、ということはあるんじゃないか、ということです。

_ そして、「啓蒙したい」「支えたい」と思っている人たちは、 それくらいで挫けてはいけないはずです。上記のようなスタンスの 人は、ハッカーとしては適性があるかもしれませんが、 啓蒙者・支援者としては適性がないのです (「適性」という言い方は違うかも)。 だから、普及・啓蒙を望んでいるものがするべきことは、 そういうスタンスの人はあまり意識せず、無理に協力させようともせず、 普及・啓蒙に積極的な人を集めて活動すればいいんじゃないかと。

_ そういう意味でいくと、Rubyのまつもとさんが「今の課題」について 言うところの、 「開発者のコミュニティと一般ユーザーの間のギャップを 埋めるような存在が出てきてくれたらありがたいな」、 という話とも通じるところがあるのかも。

_ ……あ、えーと、「これはSFじゃない」云々は、また別の話です。

■ スパイラル続き

_ くろっくはちさんの日記より。

_ その「なにものか」というのは、『名探偵に薔薇を』の場合は ラストの「えぐられるようなラスト」のようですが、 『スパイラル』の方はどういうものなんでしょうか? あの ひよののセリフ? あ、いや、その「なにものか」がどれくらいミステリと結びついている かで話が違ってくるかな、と。たまたまミステリと結びついているのか、 ミステリとしか結びつけないのか。

■ (書くのが)難しいSF

_ 市川@錦通信さんの8/1の日記のSide-Cより。

_ その手のSFの代表選手で今どきの人(国内)といえば、例えば 小林泰三とか。 ……ということが広く知られていないことが、SFの問題点なんでしょうかね。

_ SFで言う「(SFを読むときは)ふつう計算する」と いうのは、ミステリの場合「(ミステリを読むときは)ふつう タイムテーブルを書く」でしょうか。

_ なお、私は計算もタイムテーブル書きもしなかったりします。


2001/8/3 (金)

■ 様々なメッセージ

_ いくつか反応がありました。ありがとうございます。

_ そしてさらに、別の「メッセージ」も(^^; というわけで、オリジナルと 合わせてリンクしておきます。

■ プチ・カイジ、読者の好意度

_ 麻弥さんの日記(01/08/02)を読む。

_ 『「プチ・カイジ」状態(でも男女ともに萌えキャラあり)』の指摘には なるほどです。そうか、プチ・カイジだったのか……。

_ (ちなみに7月27日の日記にある「1冊が地雷」というのを読んで、 「ユールかなあ、やっぱり」と思ったのはひみつだ。)

_ それと、8月3日のページにあるアンケート?について。 このサイトに来る人の「好意的・どうでもいい・非好意的」の比率は、 「4:5:1」くらいでしょうかね。非好意的な人が来ておもしろいページでも ないですから。

_ ……え、ジャンルですか? うーん、 「ほのぼのSF・ミステリ・コバルト・Rubyサイト」でしょうか(どんな サイトだか)。

■ ハッカー(はクラッカーじゃない)、ハック(はクラックじゃない)

_ HirayanさんのはみだしS.D.(08月03日(金))で激しく同意していただく(_o_)が、

しかし多少なりとも (マスコミで誤用されているほうではなく本来の意味での)ハッカーを知らないと わけわかんないかも(^^;
と言われてしまいました(;_;) 確かにそうかも。

_ というわけで、用語解説です。

ハック
  • ちょっとしたコードを書いたり、既存のコードをちょっと書き直すこと
  • それがぐっとくる結果を引き起こすもの
  • 転じて、すごいコードを書くこと(「ちょっとしたもの」でなくても可)
ハッカー
  • 日常的にハックするひと(大してえらくなくても可)
  • すごいコードを書くひと(えらいひと)
*BSD
「BSD」はOSの一種で、いわゆるUnix系。 「*」が前についているのは、 FreeBSD、NetBSD、OpenBSDという諸々のBSD系のフリーOSを ひとくくりにして呼ぶために 「何にでも当てはまる記号」の意味で使っているため。 世界的にはややマイナーだが、日本ではそれなりに普及している。
GPL
GNU一般公共使用許諾契約書。フリーソフトウェアの代表的な ライセンスだが、実は「お前のものは俺(たち)のもの、俺(たち)のものは 俺(たち)のもの」というジャイアン理論に基いていることは意外に 知られていない。もっとも、 この「俺(たち)」が「すべての人」の意味で使われていること、 再配布しなければGPLが適用されないことに注意。MSが目の敵にしている。
BSDスタイルのライセンス
*BSD系のOSが使用しているライセンス。これもフリーソフトウェアの 代表的なライセンス。基本的には「煮るなり焼くなり好きなように して」というスタンス。ソース非公開のソフトに混ぜて使うことも できる太っ腹さが光る。
エリック・S・レイモンド
SF者ジャーゴンファイルの編纂者として有名だったのだが、 『伽藍とバザール』の執筆で広く名が知られるようになる。 Rubyのライバルと 目されるPythonが好きらしく、 最近は「PerlとPythonのVMを統合しよう!」と騒いでいる。


2001/8/7 (火)

■ 瀬名文書を読む(with pdf2txt)

_ SFセミナー2001瀬名秀明氏講演録のうち、 「3.【講演後の反響に対して】」を読んでいたのですが、 PDFというかAcrobat4(Unix版)にどうにも耐えられなったので、 pdf2txtなるツールでテキスト化してみました。 さらにHTML化もしてみたり。これでだいぶ読みやすくなりました。

_ しかしこのHTMLをここで公開するのもまずいよなあ……ということで、 瀬名さんにメールしてしまう(汗; はたしてどうなることやら。

_ という経緯はさておき、瀬名さんの文書について。

_ 「3.【講演後の反響に対して】」には、小見出しが7つあります。

_ 個人的に気になるのは【SFは何を与えているか】です。 【これはSFではない】は、つまるところ 声の大きさの問題でしかないと思いますし(もちろん、この 声の大きさの問題について、SFとそれ以外で何か差があるのかないのか、 あるとすればその理由は何か、ないとすればそれがこれほどまでに 問題化されるのはなぜか、という論点は残ります)、 センス・オブ・ワンダーなんて知らなくてもSFは楽しめると思って ますし、【プロモーション】は外しているという指摘は 他の方からさんざん出てますし。あ、でも、 【これはSFではない】の中の、

今後SFファンは自分の価値 観と違う作品に接したとき、「これはSFではない」といういい方を使わないでその作 品を論評してみてほしい。おそらく非常にやりづらいと思う。だがそれをクリアしない 限り、SFファン以外の人を納得させる評論・感想・意見にはならないだろう。

_ という指摘はちょっと重要かも。

_ で、【SFは何を与えているか】です。

_ この節で、野尻さんが SFオンライン誌上で、「私に関しては現状のSF界で ちっとも困っていないので、よしやろうという気にはなれなかったのだが」 と書いていることに対し、瀬名さんは、

正直なところ、このくだりはさすがに脱力してしまった。これはつまり、 SF界はいまのままで充分で、外部からの変革提言・意見交換は特に 必要ないということなのだろうか。

_ と書いているわけですが……すれ違ってますね。うーん。 マニアとして考えれば、野尻さんの態度にはあまり 問題は感じないのですが、個人的には瀬名さんの問題意識に 共感できるところが大きいですし。でも、やっぱりそれは SFそのものの問題意識とはちょっとずれていて、SFのひとたち みんなが考えなければいけない問題ではないと思います。

_ ……続きは明日以降にでも。

■ フォークと世界

_ それにしても、川端裕人氏が言うように、フォークは世界を変えたのだろうか? いったいいつの話なんだろう? どこがどう変わったんだろう? 世界がfork(2)して別の世界ができたとか?(<Unixなひとのみ意味明瞭)

■ NQXML

_ Rubyの話。NQXMLの新版が出ました。

_ 今回の版からXML宣言とProcessing Instructionは別クラスに なったので、これでたぶん Processing Instruction問題は解決しているはずです>よしだむさん

_ しかし早くもXML1.0との非互換を発見 (;_;) DOCTYPE Declって (validateしない)parserから見ればほとんどゴミでしか ないんだけどなあ……ぶつぶつ。


2001/8/9 (木)

■ PDFのHTML化

_ 瀬名さんからお返事をいただく。恐縮です。

■ ひとはなぜ啓蒙するのか

_ つきつめて考えてしまうと、ここに行きついてしまう ような気がします。なぜ瀬名秀明はあんなに啓蒙を説く のだろう。 なぜ山形浩生は教養を説くのだろう。なぜ稲葉振一郎はあんなに 大学教育改革に励むのだろう(って、これは職業倫理によるもの なのかも。それにしても『「行列」「順列」「数列」の区別も つかない』のはさすがに厳しそう)。 なぜ黒木玄はあんなに掲示板を作るのだろう(^^;)。 ……なんてことを考えたり。

_ いや、自分なりの答えは、もう手元にあるんですけどね。

■ 市場の拡大

_ 平山さんの「はみだし」じゃない方のS.D(2001年8月3日) (2001年8月4日) を読む。

_ 「それでも細々とながら名探偵の出る「本格物」の流れが途切れなかったのも 事実です。」とありますが、 当時のミステリなひとの語るところでは、少なくとも「名探偵の出る本格」は ほぼ壊滅していた時期があったそうです。 確か以前のSF大会でのミステリ企画でも、綾辻さんだったか 有栖川さんだったが、「SFが冬だなんだと言っても、一時期の本格ミステリに 比べればまだまし。なぜなら新刊がたくさん出てるから」という 話をしていたはず。

_ ……もっとも、私自身はミステリを読み始めたのが1990年からなので、 リアルタイムではそういう状況を知らないのですが。というか、 この辺のデータってあるんでしょうかね。70年代から80年代にかけての 「名探偵」の新刊が出る数の推移、とか。

_ で、「俺SF」と「SF全体」と「市場拡大」ですが……例えば作家のスタンスとして、 まさに「職人」に徹するタイプであれば、売れるかどうかなんてことは 関係なく、ひたすら「俺SF」の、俺SFとしての完成度のみを追及し、 それには関係ない活動はまったく行わない、というスタンスもあっていいと 思うんですよ。というか、そういう風に考えている人に、 無理矢理「俺SF」のフィールド以外の啓蒙的なことをさせようとしても いい結果は出なさそう、というか。 野尻さんにしても、SFのみにこだわっているわけではなく、 一般的な科学・工学、とりわけ宇宙関連に関しては啓蒙活動を行うことに 異論はなさそうですし。

_ 「俺SF」としての完成度を追及したい人にとって、「俺SFが売れること」 というのはどのくらい重要なのでしょうか。 もちろん食うに困るのはまずいですが、別に「俺SF」あるいは「SF」だけで 食わなくちゃいけないわけでもないですし。

_ ……ということになると、やはり先ほどの「ひとはなぜ啓蒙するのか」 と問いに戻っていくような気もします。

■ 科学と工学

_ そういえばSFの文脈で話題になるのって、たいてい科学で、 「工学」ではないですね。私にとっては工学もとても重要なの ですが。

■ conformance of XML 1.0 Rec.

_ 非互換じゃなくて「非準拠」というべきだったかも。 エンティティ宣言でExternalID(「SYSTEM なんとか」とか)が 来るとparseできない(エラーになる(;_;))、とかいう話のことです。

_ この手のconformanceについては、NQXML-1.1.0もxmlscan-0.0.10も、 まだ怪しげなところが残っているはずです。うーん。


2001/8/12 (日)

■ 夏コミ

_ 昨日と今日は夏コミに行ってきました。

_ 11日は甲影会のスペースで売り子してました。立ち寄っていただいた 方々、ご購入いただいたみなさま、どうもありがとうございました。

■ 買い物(もらい物)リスト

_ 11日。

_ 「夜光蟲」は若竹本の予告をしていたサークル。若竹本は 落としたらしい(^^; 『ミステリ本3』は星新一の『暑さ』を マンガ化していたのに魅かれて購入。

_ 昭乃さんのDiscographyは、みやびんさんがうちのスペースまで 持ってきてくれました。ありがとうございます。今回は 大幅増ページですごいことになってました。ひとことコメントは 効果的ですね。しかし138ページで無料というのはすごすぎます。

_ 『つぼてん。』もわざわざ届けていただいたもの。 どうもありがとうございました。本の方もがんばって読むです。

_ 『SCORPION』はごあいさつに来られたときにいただいたもの (なんかこんなんばっかりだ)。どうもありがとうございました。 おお、幻想建築術も単行本になるかもしれないんですね。

_ eggの三冊は、『名探偵に薔薇を』の本。わりといいかんじの マンガになってました。

_ 12日。

_ 『音マニアックス』は昭乃さんのアルバムのレビューが 載っていたので、ついでに三冊とも買ってみる。思ったより 分析的ではないのが残念ですが、感想としてはそれなりに。

_ 『秋元文庫』は資料用兼カンパのつもり。網羅度は 「95%くらい」だそうです。

_ 『Neo Aqua III』は今回の夏コミの最重要本でした。無事購入 できてよかった。でも紺野キタさんのところの本は買えず……。

_ 『COSMOS 55』を買ったらのださんと阿部さんに 「まだ買ってなかったんですか」と言われてしまう(汗; すみません。

_ どんきの本は買ってなかったので。『インタビュー』は2年前の ものだそうですが、そんなことは気にならないのでした。

_ 『徳間デュアル文庫総解説』は奥付に東洋大の名前がないんですけど、 どこが作ったことになってるんでしょうか?

_ 『モノリス折り紙』は普通サイズのものを。


2001/8/17 (金)

■ 原稿など

_ 15日は某入門本の打ち合わせ。16-17日は某ネットワークプログラミング本の 原稿書き書き合宿(?)でした。

_ 後者の方では、WEBrickの改造も進んでいます。API互換性はなくなり ました(汗; が、とりあえずHTTPSを話せるようにはなったようです。 あとは なひさんにSOAPサーバ用サーブレットを実装してもらうだけですね (無理矢理他力本願)。

■ 日記フォロー

_ 平山さんのはみだしS.D.(08月10日(金))を読む。

_ うーん、ちょっと読み違えてしまったようです(_o_) 平山さんの元の発言のうち、「パイを広げる」ことに関する発言が、 啓蒙派に対する「俺SF」派に対しての反批判、という意味合いかと思った のですが、そういうわけではなかったんですね。失礼しました(_o_)

■ 夏コミフォロー

_ 深川拓さんの日記(8月11日)を読む。

_ 天城一に限らず、今回は新刊はみな完売だったようです。 で、天城一特集にしても、一応夏コミに例年よりは多めに持って 来たのだそうです。それでも完売なのは、天城一がコミケ的にも メジャーになった、ということでしょうか(<それはないか)。 なんせ一冊が厚いので、量を持ってくるのは大変、という ことはあるみたいなんで、どうしても手に入れたい! という 場合には通販で申し込んでいただくのが吉かも。

_ # それこそ、Webで事前購入希望調査とかやった方がいいんですかね?

_ さらに、市川憂人さんの日記(08/11(Sat))を読む。

_ むーん、いらっしゃっていたのでしたか。それは申し訳ないす。 今年は11日は東館めぐりもせずに、わりとスペースに詰めていたつもり だったのですが……あ、お昼ごろだったら、ご飯を食べに行っていたかも。


2001/8/19 (日)

■ SF大会

_ 第40回SF大会に行ってきました。


2001/8/22 (水)

■ 『いじめの社会理論』

_ いなばさんのページで知った、 内藤朝雄『いじめの社会理論 その生態学的秩序の生成と解体』(柏書房) 【 bk1 / ISIZE / 旭屋 / Jbook / BOL / 紀伊國屋 / amazon / eS! / 富士山 / 本屋さん 】 を入手。 まだまだ最初しか読んでいないが、これは名スレ傑作の 予感。いじめを単なる子供のものとせず、広く共同体内で発生しうる現象 として捉え、その仕組みを抽象的・理論的にモデル化(!)する一方で、 現実のいじめの場に対し、その解体への処方箋を提出しようとする(!!)もの。

_ 内藤氏のスタンスは『弔いの哲学』 【 bk1 / ISIZE / 旭屋 / Jbook / BOL / 紀伊國屋 / amazon / eS! / 富士山 / 本屋さん 】 での小泉義之氏 のそれに似ている。基本的に個人の生存や自由を最大限に評価し、それを 邪魔するものは徹底的に「悪」であるとするところとか。 国家であっても、共同体であっても、学校であっても、個人の生命・ 自由を奪おうとする場合、それは100%、絶対的に国家や共同体や学校が 悪いとみなしている。

_ この本に対する教育関係者の反応が知りたい。


2001/8/23 (木)

■ SFとやおいの相異点

_ 他に適任者がいそうなものを、なんで私がこんなことを書くのか 今ひとつ不明ですが、SF大会で話したことのメモがわりに。

_ SFとやおいの似ているところ。どちらもそのジャンルの一部(あるいは ジャンルに近接するジャンル)に対して、「これはSFじゃない」 「これはやおいじゃない」という批判を行う人がいる。 そういう人は、そのジャンルの一部に対して、それが元々の ジャンルのコアを成していた作品群と比べ、明らかに「堕落」していると 思っているが、実際にそちらの方が広まっている。 そして、その広まり方に対して、危機感を覚えている。

_ SFとやおいの正反対のところ。SFは、より現実社会に近い舞台・ 登場人物(いや、人じゃないこともありますが)の作品の方が 一般に普及していている。一方、やおいの場合、より現実社会から 遠い舞台・登場人物(出てくるやつらが全員美形とか)の作品の方が 一般に普及している。

■ 新本格と「歪み」

_ スズキトモユさんの「見下げはてた日々の企て」(01/08/22)を読む。

_ 「閉ざされた山荘もの」は、「嵐の山荘もの」という言い方の方が メジャーかもしれません。このタイプで「ほとんどみんな 死んでしまうもの」というと、あれとかそれとかを思い出しますが、 これは「みんな殺す」という目的が先にあって、そのために 「逃がさないところ=閉鎖空間」を選ぶ、というロジックだったような。 そういう意味では無茶苦茶ではない……とは言えないか、さすがに。

_ で、「新本格」についてですが。もちろん新本格にも「新本格とは何か」 というギロンがあったりするわけなのですが、とりあえず 「人工的でどこまでも現実から乖離したような世界観の歪み」という のは、当初の新本格作品の中では少数派だったように思います。

_ そもそもの『十角館』からして、基本的には大学生たちが主人公の、 栗本『ぼくら』シリーズの延長線上にある青春ミステリ、 と言えなくもないです(ちょっと苦しい?)。舞台がたまたま十角形の 形をしていたとか、登場人物がたまたまミス研で、 ちょっと恥ずかしい呼び名を使っていたというくらいで。 で、他の新本格作家、法月綸太郎や我孫子武丸、歌野晶午や有栖川有栖の とりわけ初期作品には、「世界観の歪み」というのはあまり見られないでしょう。 (いやまあ文章が「人工的」で「歪んでいる」というような 批判はありましたが(汗;、それはまた別の話なので)。 さらに、創元デビューの作家を加えても、その傾向は変わらないかと。

_ このような「歪み」が積極的に導入されるようになったのは、 おそらくは麻耶雄嵩とそれに続くメフィスト賞作家・作品からじゃないで しょうか。 「京極・森・清涼院」という作家群と、上の新本格作家群を比べると、 そこには何かしらの断層がありそうです。それは例えば、西澤保彦で 言うと、『完全無欠の名探偵』と『七回死んだ男』『人格転移の殺人』 との断層、と言えるかも(ちょっと厳しい?)。

_ 私は麻耶以降を「ポスト新本格」と呼んでいます。この分類を前提とすると、 「新本格」とされる作品は、それまでの社会派 = 風俗派 = ある種の凡庸なリアリズム的世界からほとんど離れないところで行なわれていた ミステリから、ポスト新本格での自由な世界設定・登場人物へ至るまでの、 いわば過渡期の作品群だと思っています。

_ ……ちなみにここ3年くらいはミステリをあんまり読んでないんで、最近の 傾向は分からないんですけど。

_ ついでに書いておくと。新本格の勃興はライトノベル・ヤングアダルトの 拡大とパラレルに論じるべきだと思っています。80年代後半に、 小説の文体と内容に、何か不可逆な変化が起きたような気がします。 さらに話を広げると、SFが90年代に伸び悩んだのは、この変化が ジャンルの本流ではなく、ジャンルの傍流とされていたライトノベル・ ヤングアダルト系のSFに留まってしまったからだと思っています。


2001/8/24 (金)

■ SF研とミス研

_ SF大会の瀬名さん企画で、「SF研には怖い先輩がいて、軟弱なSFを読んでる やつをバカにしたりしてたから、SFファンが避けられるようになった」 みたいな話がありましたが、それは違うんじゃないでしょうか (と会場で言おうかと思ったんですが、タイミングを 逸してしまいました(_o_))。

_ もちろんかつてのミステリ研でも、そういうのはあったはずです。 私がいた某大推理研は、本格マニア度は極めて薄い(「うちの推理研で 人気ある作家は宮部みゆきと真保裕一だったなー」と言ったら、 別のミス研の人に「そんなのミス研じゃない」みたいな ことを言われた)のですが、それでも新入生歓迎読書会 で「○○が好き」という新入生に対して「えー」という反応を 示したことがあったような(「○○」が何かは秘密、というより あんまり覚えていない)。 一般的にそういう傾向は近年薄くなったと言われていますから、かつての ミス研ではそのような雰囲気はさらに濃厚だったと思われます。 ということは、SF研とたいして変わらないような。

_ そんなわけで、単にSFファンにそのような傾向があったからといって、 それをSFファンの特徴と見なすことはできないでしょう。ちゃんと 対照群と比較しないとね。


2001/8/25 (土)

■ Rubyと代入

_ 一歩さん(SF大会ではどうもでした(_o_))の「ruby;pointer?」を読む。

_ えええっ、そうなります? それはヘンですよ。私のところでは、


  value_a = value_b = ''
  value_a = 'test'
  $stderr.puts value_b

_ を実行しても、ちゃんと(?)何も表示されません。

_ Rubyにおいて、「代入」と「メソッド」は明確に区別されています。

_ んで、上の例でいくと、2行目で変数 value_a に対し、二度目の 代入が行われているので、value_a の変更は value_b には影響を 及ぼしません。ついでに、これ以降のvalue_aに対する操作も、 value_b(とその指し示す「""」)には影響を及ぼしません。

_ Rubyにおける「値渡し」というのは、いちいち obj.clone するようなものですかね。これはオブジェクトの意味(同一性)が わからなくなりがちになる(しかもコピーのコストがかかって遅くなる) ので、あまり推奨できなかったりします。

■ 星新一問題

_ 林さんの「草の日々、藁の日々」(8月23日) を読む。なるほど……。や、林さんなら回答率8割くらいいくかな、 とか勝手に思っていたのですが。


2001/8/26 (日)

■ 究極のバザールモデル in 2ch

_ /.Jでも話題になっている2ちゃんねる崩壊の危機とread.cgi改造 ですが、ここで行われていた「開発」は、 ある意味「バザールモデル」の極北ではないでしょうか (って、ちゃんと「(藁」って書くべき?)。

_ 何がすごいって、とりあえず「流量を減少させる」という目的が 決まっているだけで、誰がプロジェクトリーダーなのか、どういう 方針で何に手をつけるかも決まらない状態のまま、どこの誰だか わからない人たちが集まってコードをいじってたわけですから。 しかも、話し合っていると同時に、 違う板ではコードのリファクタリングを相談したり、 また別の板ではHTMLの検証をしてたり、 さらに他の板では他板の住人たちが応援スレで応援したり、 挙句の果てには、改造の相談をしているスレッドに ゴミをコピペして邪魔する奴までいる(それを 削除人さんが適宜あぼーんさせる)、 というどうにも混沌とした中で、それでも作業が進められていったわけで。 ちゃんとリーダー、もしくは統率するグループがいて、 MLとCVSを使って粛々と進められるような ふつうのオープンソース開発モデルでは 想像すらできなかったでしょう(ちなみにコードのアップ用に あわてて用意されたFTPサーバは、過負荷のせいかアタックのせいか アクセスできなくなってIPが変わったりしていた……)。 まさに良くも悪くも、この上ない「バザール」状態 :-)

_ なかなか貴重な体験をさせていただきました(<結局3時すぎまで 起きてたやつ(汗;)

■ /.J vs 2ch

_ もう一つ、2ちゃんねるについて。

_ とっても私見では、例えばプログラミングに関することなら、 スラッシュドットジャパン(/.J)よりも 2chの プログラム板の方が面白いと思っています。いや、 単純に「2chの方が〜」と言い切ることはできませんが (2chの板ごとの差が大きいので)。

_ /. のモデレータシステムは悪くはなさそうに思えたのですが、 あまりうまく機能していないのではないでしょうか。 100全部のコメントしかついていないのであれば、下手に モデレートされるよりは、全部見た方が早いです。だいたい 自分と同じ好みでモデレートされているかどうかなんて 分からない(というか、実際に食い違う)わけですし(<前に Anonymous Cowardで書いた記事が-1食らったらしい)。 で、過去150件のうち、実際に100以上のコメントがついているのは、 「侃々諤々モデレーション」と「ネット的座り込み、じつはただのDoS」 の2回のみです。

_ さらに他でも指摘がありますが、かなり短期間でコメントがつかなくなって しまうように見えるのも問題です。これはすぐに「古いストーリー」に なってしまうからでしょう。 これでは、いったん出遅れると、書いても返事があるかどうか 分からない状態になってしまうわけで、そうすると書き込む気力も 減ってしまいます。これに対し、2ch(のようなスレッド式掲示板)では、 コメントがあり続けるものは、ずっとアクセスしやすい状態になって いるので、それなりに内容のある意見交換が楽しめます。

_ ……って、要するに後者が原因でコメント数の増加が望めなくなり、 それによってモデレーションが機能しなくなる、ということなのか。 だったら、スレッド式掲示板 + モデレーション、という形にすれば 万事解決するのかな? おお、これなら面白そう。この方式、 どうでしょうか?> slashdot.jp のみなさま(とはいえ、日本側で 全然違うコードを採用することは無理か)





written by Maki (maki@open-news.com)
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