ただ、風のために。4 (2000/March)

遠い記憶
  • 1999 [ Jan, Feb, Mar, Apr, May, Jun, Jul, Aug, Sep, Oct, Nov, Dec ]
  • 2000 [ Jan, Feb, Mar, Apr, May, Jun, Jul, Aug, Sep, Oct, Nov, Dec ]
  • 2001 [ Jan, Feb, Mar, Apr, May, Jun, Jul, Aug, Sep, Oct, Nov, Dec ]
RETURN / TOP
Generated by nDiary version 0.9.2

2000/3/2 (木)

■ DASACON 3

_4/1に開催されます(たぶん)。場所は関西のどこか(たぶん)。 ゲストはまだ決まっていません(たぶん)。

_ ……うーん、どう考えても日付から決まったとしか思えませんが、 その通りです(たぶん)。まあ、それでもいいでしょう、DASACONですから(たぶん)。

■ ミステリ観の不一致

_ 風野さんの日記 を読む。あ、かわされてしまった……。

_ どうやら『ミステリ観の違い』は間違いなくありそうです。 でも、「推論が事実だとわかる」、というのはちょっと強すぎた かも(弱気)。ちょっと言い換えて、「ある推論が他の推論よりも 正しい(正しそうな)ことを示す」、に変えさせていただきます(_o_)

_ どういうことかというと、てけとーな推理、というよりも単なる 思い付きみたいなものを並べて終わり、というのではちょっと いやーんだということです。それのどれが正しいかを、納得できる形で 示せないと。『夜の蝉』などの場合、ほとんど比較らしい比較を しないので、 その妥当性を検討した瞬間にロジックの甘さが露呈しかねない 弱さがあるように思います。

_ 「論理の美しさ」の考えも違いそうな。「論理の美しさ」と言われて 私が思い浮かべる作品と言えば、泡坂妻夫の作品や、 麻耶雄嵩「シベリア急行西へ」とかだったりします。

■ 「評価」「好悪」「性質」

_ wimさんの日記 を読む。

_ 私が気になったのは、北村作品に対するwimさんの文章というより、 『「作品としての善し悪し/その根拠を成す部分の指摘」』と 『感情的な「好き嫌い」』を対比させていることです。

_ わたし的には、やはり木下是雄的というか、「事実」と 「事実でない感想・意見・主張」とが対立するものだと思うので、 「作品としての善し悪し」と「感情的な好き嫌い」との区別をつける のは難しいのではないか(どっちも事実じゃないんだし)、 また「作品としての善し悪し/その根拠を成す部分の指摘」の中に 「感情的な「好き嫌い」」が混ざることは特に問題視すること でもないのではないか、ということです。

_ 「善し悪し」が事実の指摘から、それこそ論理的に判断 できるものであればいいんですが、どうもそうはいかないようだ、 というところに私の不満が集中しているわけだったりします。はい。

■ 「本格テイスト」とロボットもの

_ 護堂さんからメール。「本格テイスト」という言葉を教わる。 なるほど、これは便利なことばですね。どうもありがとうございます。 いっそのこと「本格風ミステリ」とでも言えばいいのかも。

_ さらに、アシモフのロボット物には良いハウダニットがあるかもしれない、 と言われる。が、ロボット物は(も)あまり覚えていない私には 判断がつかないのだった。

■ 北村薫評価

_ 長く気力がないのでとりいそぎ要点だけ書いておく。

_ 北村薫の功績は、本格テイスト溢れるミステリを、日常を描く現代小説の中で 展開させる、という書き方を考案し、実践したことにあるのではないか。

_ 「空飛ぶ馬」発表当時、一般向けの本格ミステリなどほとんど なかった。今とはまるで状況が違う。そこで本格ミステリをやり、 作品的にも商業的にも成功させた、ということはすごいことだろう。


2000/3/7 (火)

■ 日記

_ を書く心の余裕がない。wimさん、naubooさんの日記への言及はしたい のですが……。

■ SF Japan

_ はカラーイラストがいい。この4人にこういう絵柄をあてる、 というのが気持ちよかった。

_ で、新井素子『チグリスとユーフラテス外伝 馬場さゆり』を読む。

_ 感想:ストーリーがない。ほぼ説明とイメージだけに終始している。 新井素子でこういう作品はかなりめずらしいのでは? 新鮮。

■ SFが読みたい!

_ は「このミス」と「本格ミステリベスト10」とを合わせた感じ。 イデア重要なところが「本格ベスト」風。

_ で……。「チグリスとユーフラテス」は、4位。うーんうーん、そう ですかそうですか。うーん。

_ 「チグリスとユーフラテス」に票を入れた方は以下の通り。敬称略。 カッコ内は順位。

_ ……いやあ、そりゃあ私だってベストを選ぶとしたら、他に思いあたる 作品がないので1位以外にはできないですけどね。

_ それと、あんまり注目されてないようだが、「SF関連ビデオ目録」の 各作品へのコメントが、短いながらもちゃんとした評になっているのはすごい。 「書籍目録」もこのくらい頑張ってほしかったかも。


2000/3/12 (日)

■ MYSCON

_ が終わりました。つかれた……。いや、楽しかったです。みなさま おつかれさまでした。そして、ありがとうございました。


2000/3/18 (土)

■ MYSTERY'S REALM

_ に行く。ちょっと進行にぎこちなさを感じるところもあったが、 楽しめた。七海さんも見られたし。どうもおつかれさまでした。

_ 人の入りがよくなかったので、次回以降が気になるのだが、できれば 続けてほしいと思う。頑張ってください。

■ 途中、

_ 抜け出して、留学の奨学金の情報を求めてさ迷う。が、得られずじまい。 いや、別に私が留学するわけじゃないですが。

■ そういえば

_ MYSTERY'S REALMの後、合宿企画は日和ることにしたので、創元推理倶楽部 東京分科会とSRの会の寄り合い(?)の宴会に流れる。そこで藤桂子『絶対悪』が すごいらしいとの情報を得る。ちょっと読んでみたい。

■ 日記とか

_ 葉山さんからもっと日記を書くことを勧められる。 ということで、早速書いてみる。

_ また、いくつかのサイトで『チグリスとユーフラテス』 が話題になっているので、 もう少しこの作品について触れた方がいいのかな、とか思ったり。

■ 新井素子 in 「SFが読みたい!」その2

_ その前に、前回に引き続き、今回はコメントチェック。 ほめてる方だけではないのに注意。

大倉貴之(p.5)
第四位の新井素子『チグリスとユーフラテス』は、SFならではの
壮大な年代記であり、普遍的なテーマである愛、嫉妬、仕事、
芸術、野望などを読み手に問いかける傑作。
三村美衣(p.20)
三村 子供を産まない女は、どうやって大人になるのか、
何を後世に残すのかって話じゃない。ものすごくリアルな話で、
逆にSFで読む必要を感じない」
岡本俊弥(p.32)
新井素子は長年書かれてきた著者の特徴を凝集した作品でもあり、
その点、賛否が分かれるだろう。
川口晃太朗(p.33)
みなさんが選びそうだけど、やっぱり一位はコレ。
(注: と言って一位に推している)
日下三蔵(p.34)
日本SFはかなりの豊作だったと思う。いざ選んでみたら、『グッドラック』や
『エリコ』がはみ出してしまい、ビックリしている。
(注: 新井素子への直接の言及はないが、3位。)
小谷真理(p.34)
国内作品は、今日の「日本における少女」というコンセプトを徹底的に
追及した(1)がすばらしかった。少女語を話す老女のサイボーグ性に
戦慄が!
(注: 原文では(1)は「マル1」)
水鏡子(p.35)
拒否反応を起こした日本作品話題作は『カムナビ』と『チグリスと
ユーフラテス』。
難波弘之(p.36)
今年は(1)がダントツでした。こんなこと書くとフェミニズムの方々に叱られ
そうですが、“主婦感覚で書いた本格SF”だと思います。
(注: 原文では(1)は「マル1」)
星敬(p.37)
『チグリスとユーフラテス』は、新井素子の集大成ともいうべき
大作。隅から隅まで素子ワールドのエッセンスに溢れる傑作。
森下一仁(p.39)
なかでも(1)と(2)は九〇年代日本SFを代表する一冊といってよいと思う。
志の高さに感服いたしました。
(注: 原文では(1)、(2)は「マル1」「マル2」)

_ この中でわたしが気になったのは、岡本俊弥さん川口晃太朗さん日下三蔵さん か。他の人はこういう評価にある程度納得できるのだが、この三人が なぜ『チグリスとユーフラテス』を推しているのかはあまり分からない。 とりわけ日下三蔵さんは、個人的に読み手として絶大な信頼を置いているので、 余計気になったりする。って、MYSTERY'S REALMで聞けばよかったのか。

■ 「評価」と「相性」

_ 「合う」「合わない」という相性を抜きにして、作品を評価することは 可能/有効なのか。

_ 北村薫の「読みにくさ」、上遠野浩平の「読みにくさ」、 綾辻行人(あるいは『新本格』)の「読みにくさ」、 そして新井素子の「読みにくさ」。

_ 作品を擁護する言葉も、むなしく感じられなくもない。どんなに 擁護したところで、楽しめなかった者に楽しめた者から何を語ればいいの だろうか。

_ どう楽しめたかを語ることには意味があるんだろうが、反批判を書くこと には、一沫の空しさは拭えない。

■ 新井素子『チグリスとユーフラテス外伝 馬場さゆり』

_ (以下、『馬場さゆり』の内容について詳しく触れますが、でも、だからといって この作品が楽しめなくなることはないと思います。そういう 話じゃないので。が、気になる未読の人は読まないでください。)

_ 個人的には『チグリスとユーフラテス』よりも悪い意味で気になる ところが少なかった分、印象はよい。

_ この作品の構造は、大きく分けて3つの部分に分かれる。 第一は、惑星移民をめぐるさゆりの状況。その背後にある「生々しさ」への嫌悪。 第二は、ファージから、

喰い尽くす。
母体の、すべてを、喰い尽くして。
展開する。
というイメージを媒介に、「惑星間移民って、つまりはそういうことじゃ ないのか?」という命題に行きつくイメージの連関。 第三は、「特別なあなたの不死を願う。」という言葉(「あなたがいて/わたしがいる」 というなつかしい言葉を想起させる)と想い、そして そんな想いを「人類」の「歪み」ととる感覚。

_ 喰い尽くすイメージと歪みのイメージを、自分の中にあるものとして 受け入れることにより、さゆりは「生々しさ」を受け入れ、 船に乗ることを決意する。

_ 第一を中心として、第二と第三がバランスをとっている。あるいは、 第二と第三によって、第一のさゆりの「決意」が導かれる、という 構造。この構造は単純にきれいで上手いと思う。作品全体のバランスという 意味で。


2000/3/19 (日)

■ BULLET BALLET

_ 塚本晋也『BULLET BALLET』を観る。創元東京分科会の萩原さん、 佐竹さんと一緒に行く。集合時間を30分間違えていたようで すみません(_o_)

_ 「バレット・バレエ」とは銃弾のバレエ。──という塚本監督の言葉が あるが、結局はいつもと同じ話だった。いや、いい意味で、だが。 あの音楽でざらっとしたモノトーンのあやしげな映像を観ると、 『鉄男』を思い出してどきどきするよね。しないか。

_ 帰りに、パンフレットを買うついでに、勢い余って「やつのTシャツ」を 買ってしまう。名前がすごすぎ……(もちろん『鉄男』の「やつ」のことだ)。 ニュープリント版も観に行かなければ。


2000/3/31 (金)

■ 書きかけ

_ 新井素子とか藤桂子とか(「絶対悪」を読んだのだった)について書きかけたが、 うまくまとまらずやめる。でも『チグリスとユーフラテス』の文体については 一応自分の中でまとまったかも。

■ Cobalt 2000年4月号

_ を買った(のはだいぶ前だが)。

_ 若木未生「ギミック・フラワー」を読みかける。 XAZSAが! XAZSAが! でも別ストーリーなのと、 語り手が違うのでちょっと、かも。

_ 吉平映理「ふたりの本音」を読む。音屋さんの話。「耳」はあるのに「腕」がない 主人公と、「耳」も「腕」もあるその彼女。……うーん。 本音が書けているのは「ふたり」じゃなくて主人公一人だけだし、彼女に 対しての気持ちの折り合いはつけても、自分の「腕」のなさに対しての 折り合いがついているようには見えないのは片手落ちかも。でも オーソドックスなテーマに正面から挑んでいるのは気持ちいいし、 巻末の言葉もいい感じではある。

_ 松井千尋「ひっくりかえしてね」を読む。うーん、なんでこのオチなのかな? ひっくり返す話との関連は? 語りかける文体もいま一つ成功している ように見えない、というかこの手の文体は普通に書くよりよっぽど難しいので 受賞第一作でやることじゃないよね、というまだまだな感が強い。

_ 巻末によれば、赤川次郎は著書400冊を達成したらしい。おめでとうございます。 と、竹岡美穂のイラスト(相変わらずよいね!)を見ながら思う三月。

■ というわけで

_ 明日はいよいよDASACON3です。





written by Maki (maki@open-news.com)
RETURN / TOP