Cobaltと大特集主義

2002年に入り、雑誌Cobaltには大きな変化が生じています。 それは「大特集」の存在です。 3月あたりから気になっていたので少し調べてみました。

Cobaltは時期によってさまざまな試行錯誤を繰り返しているのですが、 「特集」については1998年が特徴的です。この年は、 なぜか毎号特集が行われていました。

もっとも、この年の特集は、小説が3〜4作載るだけという、 いたってシンプルなものでした。

1999年以降は、このようなテーマ別特集は 毎号は行われてはいません。テーマ別特集(「特集 17歳」など)、 作家特集(「若木未生特集」など)、そしてボーイズ・ラブ特集が 散発的に行われるようになりました。

この中で注目するべきはボーイズ・ラブ特集でしょう。 特集の一環として掲載される小説の数が増えているのに加え、 例えば2000年10月号では作家アンケートやホストクラブ取材記事(謎)、 2001年10月号では、読者アンケートや座談会など、 小説以外の記事が現れるようになります。

この「小説以外の記事と組み合わせる」という傾向は、 ボーイズ・ラブ以外のテーマ別特集についても、 徐々に広がっていきます。 たとえば、2001年4月号の「新人競作 私ってワガママ?」と 2001年10月号の「新学期、特別テーマ競作」。 前者は「渋谷街頭104人アンケート」、 後者は「「学校」を斬る! 座談会」という記事が、企画と関連して 行われています。もっとも、この二つでは、小説はそれぞれ4つ・ 3つと、あまり多くはありません。 これが変化するのは、2002年になってからです。

最初は2002年2月号でした。この号は、 「大特集 陰陽師」として、小説が5つ、小説以外の記事が4つ、 また「ヴァレンタイン短編小説特集」として、 小説が6つ掲載されています。

次の4月号からは、特集が一本化されます。 この号では「新学期 学園大特集」として、 小説が7つ、小説以外の記事が5つ、 竹岡姉妹によるミニテディストーリーも「学校ぶらさがり編」 となっています。

さらに6月号は「魔法ファンタジー大特集」として、 小説が9つ、マンガが2つ、それ以外の記事が2つ、 ミニテディストーリーも「魔法でどっきり編」 となっています。

そして8月号の予告には、「ちょーヒロイン大特集」として、 野梨原花南・宮城とおこ・藤原眞莉・今野緒雪・若木未生・ 橘香いくの・真堂樹(ここまではタイトルと内容の予告つき)と、 深谷晶子・小松由加子・石川宏宇・深志いつき・清水朔・なかじまみさを (こちらは作者名のみ)と、たくさんの作家さんが挙げられています。 つまり、(原稿さえ落ちなければ……)10を越える小説(宮城とおこは もちろんマンガ)が特集として掲載されることになるわけです。

以前のテーマ別特集は、比較的「新人の発表の場」として機能して いました。一方、今年に入ってからの大特集では、それなりに人気が ありそうなシリーズの作品も、新人の短編も、何でも載せるように なりつつあるようです。これに、ボーイズラブ特集で展開された 「大量の小説&小説以外の特集記事」という形式が相俟って、 現在の大特集のスタイルが形作られているのです。

というわけで、ボーイズ・ラブがCobaltにもたらしたものは 「大特集」というスタイルだった、と言えそうです。 うーん、ちょっと意外な結論です。

[「Cobaltを読む。」に戻る]


TAKAHASHI 'Maki' Masayoshi(maki@rubycolor.org)